「笑顔」 2

そして今日の授業は終わり、俺はあのぼろいアパートに帰った。
ポケットから鍵を出そうとすると、誰かが階段を上ってくる。

「あれ、アムイ君? わぁ~私の隣に住んでたんだ」


スーパーの袋を持ったすずだった。
袋の中には野菜などが入っているのが見える。

まだ何か言いたそうなすずを無視して、俺は家の中に入った。


それから毎日、時間があればすずは俺に話しかけてきた。

「前はどこに住んでたの?」とか
「料理得意? どんなの作れる?」とか、どうでもいい話。

正直、うざかった。1人にしてほしかった。


2週間もたつと、俺は限界だった。
すずを傷つけて、まとわりつくのをやめてもらおうと考えた。

休み時間、いつものようにすずがやってくる。

「ねぇねぇ……
「お前さぁ……」

いつもより大きな声で言う。



「何で包帯してんの?」





…………これで

これですずは、俺のこと嫌いになった……

絶対傷ついた……そう思ったのに


すずは笑っていた。

「ごめんね、今はちょっと話せない。また、今度話すね」



俺はぼうぜんとした。

なんでアイツは笑っているんだろう……?

傷つかなかったのだろうか……?




すずは、少しも嫌な顔をしなかった。

 

放課後、俺は銀行に寄って少ししかない貯金を半分おろした。
アパートの家賃を払うためが、1番大きな理由だ。

銀行から出てすぐ横の細い道を歩いていると、不良っぽい奴ら5、6人に出会ってしまった。

「なあ、お前さぁ、さっき銀行から出てきたよなぁ。ちょっと金貸せよ」

「断る」

「ああ? やんのか、テメー。おい、やるぞ!」





「うぅ……」

もう暗くなっていた。

俺は殴られ、蹴られ、最終的に財布を取り上げられた。

「なんだコイツ、金 少なすぎだろー」
「うわっ、ビンボーかよ。ま、もらっとこうぜ」
「あばよ、ビンボー人」

俺に空になった財布を投げつけると、不良たちは去って行った。

「くっそ……」


なんとか立ち上がる。

口の中が切れて、血の味がした。