俺がすずと初めて会ったのは、高一の5月だった。
俺は家賃の安いアパートに引っ越してきて、この桜北高校に転入した。
「えー、今日からこのクラスに入る夜塚アムイ君だ」
(・・・・・・アムイ!?)
(変わった名前・・・・・・)
担任が言った後すぐ、クラスの奴の声が聞こえる。
でも別に気にしない。
紹介が終わると、俺は一番後ろの席に座った。
隣の奴と目が合う。
「私、明嶋すず。よろしくね」
俺はそいつを見て少し驚いた。
そいつの右目は包帯でぐるぐる巻きにしてあり、顔の左半分しか見えていない状態だった。
でも本人は気にしていないのか、明るい笑顔だった。
右目について少し気になったが、人と関わりたくなかった俺は、その時聞かなかった。
昼休み
他の奴らは机をくっつけて、楽しそうに弁当を食っている。
俺は友達がいないどころか、つくる気もなかったので
こうして1人でコンビニのパンを食っているのだ。
横目ですずを見ると、アイツも1人で弁当を食っていた。
友達がいないのか・・・・・・と、俺は一瞬だけそう思った。
「ねぇ、アムイ君ってハーフなの?」
気がつくとすずは食い終わって、俺に話しかけてきた
俺は仕方なく重い口を開く。
「・・・・・・ちがう。母親が勝手につけた」
「へぇ~、かっこいい名前だよね!」
どこが、と俺は思った。
名前がカタカナで、昔からハーフと間違えられるこの名前が 俺は嫌いだった。
「いいなぁ、お母さんがつけてくれたんだ・・・・・・」
一瞬、すずの笑顔が曇って見えた。
「私の名前は、誰がつけたのかな・・・・・・」
「・・・・・・?」
「あ、なんでもないっ・・・・・・そうだ、私のことはすずって呼んでね!」
そう言うと、すずは教室から出て行った。
―私の名前は、誰がつけたのかな・・・・・・
あの時俺は、まだこの言葉の意味を知らなかった。